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Date 2021.08.27
WAN FILE 04 Ms.Kumiko Obinata
無限の愛をもって、愛されるパーソナルスタイリスト
大日方 久美子 さん
東京都内で暮らす大日方久美子さん。ファッションに彩られた人生や愛犬たちとの必然とも思える巡り合わせついてのぞいてみよう。
「女優やモデルのスタイリストとは異なって、一般のお客様のお洋服を提案するパーソナルスタイリストとして7年前に独立しました。」
しとしと雨が降る静かで綺麗な住宅街の中でも、自然溢れる一層落ち着いた場所があった。
少し重さがある扉を開けると、元気なワンちゃんたちと、柔らかい色のセーターを軽くまくり、すらっと軽やかなパンツスタイルの女性が迎えてくれた。
その表情から感じた優しさは、家族みんなを包むように暖かい。
その後ろに、続くように何匹かのわんちゃんたちが顔を覗かせていた。
廊下をついて行き案内された空間は、白を基調にごろりと寝転べるソファやずっと眺めていられるアートが壁にあり、いくつも重ねられた厚いファッションブックやご友人からのギフト、お花などが置いてあるのではなく、綺麗に飾られており、つい目を向けてしまうお洒落なリビングだ。
ソファに腰掛けるとわんちゃんたちが、久美子さんにぺたりと寄り添ってくる。
「約17年間、会社員として洋服の販売員をしていましたが、1つのブランドに縛られるのではなく、お一人ずつにベストなものをご提案したくて7年ほど前にパーソナルスタイリストとして独立しました。」
スタイリストといえば、テレビや雑誌で、女優やモデルの衣装を選ぶイメージだが、久美子さんは一般のお客様の洋服をコーディネートしている。
ファッションといえば、お店で購入するよりも、手軽にネットで好きなものを探したり、SNSで知ったものを購入する人も多い時代。自分で選ぶのではなく、自分にあったものを敢えて提案してもらうことで、暮らしをより彩るのだろうか。
ただお店の物が好きだから通うのではなく、久美子さんの人柄や感性の上にお客様との信頼関係があったのだろう。
長年の顧客とはいえ、
「会社を辞めるのはいいけど、私のスタイリングは続けてね。」
そうお客様から伝えられた際には、少なからずあったであろう独立という不安が、そっと薄まったのではないだろうか。
時間だけが絆を深めるのではなく、久美子さんがコーディネートを通じて、お客様の心の寄り添っているからこそ成立する。
そこに魅力があるお仕事だと感じた。
「何か問題を抱えてうちに来る子を迎えるだけでしたが、初めて私が選んだ子がいます。」
犬や猫、ペットとして楽しまれてきた価値観は無くなって、”家族”として人生を共にするようになった動物たち。
犬を買ったり、選ぶことがなかった久美子さんに、繁殖犬として役目を終えたわんちゃん達を引き取りに行く機会があった。
施設に入ると、視界いっぱいに何十頭もケージに入ったわんちゃんたちが、久美子さんたち目掛けて声をかけるように吠えている中で、1人だけ、一番下の端っこから静かに見つめる子がいた。
「あ!あの子にします!って初めてわんちゃんを選んだのが、このキャンディでした。」
ケアンテリアと種類だけ聞いて、自宅に戻ってから特徴や性格を調べた。
「気性が荒い、飼いづらいと情報が出てきましたが、嘘みたいにキャンディはとても穏やかで、誰に対しても優しいんです。」
ずっと犬と暮らしたかった久美子さんが旦那様と暮らし始めて数ヶ月たった頃の出会いだった。
「里親さんを探しているわんちゃんがいるから、インスタで拡散してもらえないかな?」
シュナウザーのジロは、保護団体さんに新しい家族を探してもらうところで、久美子さんに相談が来た。
「キャンディと相性が良ければうちで引き取るよ。」
まさかの回答に保護団体さんも驚いたのではないだろうか。
何度か2人を合わせていても問題はなかったのでジロを連れて帰ると、
「何事もなかったように2人ですっと眠っていたので、うちの子にしようって思いました。」
穏やかに座る背中を撫でる姿は愛が溢れていた。
「少し近所に買い物に行くだけでも、帰ってくると1日中待ってくれていたような反応で迎えてくれて、無条件に愛を与えてもらっています。もう存在そのものが愛でしかないと思っています。」
わんちゃんとの日常に溢れる出来事から学ぶことがあり、それを素直に受け入れられるからこそ、この子達の幸せを心から願い、ずっと一緒に生きていけるのだろう。
「家族が見つかるまでの子をお世話したり預かることもあります。 でも、愛おしくなって私たちが家族にしちゃいました。」
前の飼い主から虐待を受けて痩せ細り、最後は袋に入れられてゴミ箱で見つかったヴィヴィは、一時預かりで里親さんを探していたが、衰弱状態から回復していく姿を見守っていたら、家族にしてしまったそうだ。
そして、同じ保護団体さんからムーちゃんを預かった。
「トリミングだけのお世話の予定でしたが、家族の中でも若いヴィヴィと仲良く遊ぶ様子が可愛くて、シニア2匹・若手2匹でバランスがいいのかなって思って、そのまま家族にしちゃいました。」
わんちゃんから愛をもらうと仰る久美子さん。自身が愛に溢れているから、家族みんな愛に溢れているのだ。
「私自身365日異なったコーディネートを作っていました。 いつもと同じ自分が嫌だったんですよね。」
久美子さんにも迷いの時期があった。
現在、インスタグラムのフォロワー数は9.4万人もおり、エレガントから作るシンプルなスタイルに、多くの女性が魅了されているが、前の日と同じ服、先月のいついつと同じコーディネートになってしまう自身の服に目を背けたくなる気持ちを持っていたことがあったそうだ。
「昔の自分と同じになるのが嫌だ。少しでも成長したい。」
前向きに聞こえる言葉だが、忙しさや心が不安定になる感覚を洋服で外から整えていた。洋服に対しての想いも、楽しむのではなく執着心が強かった。
そんな自分が変わったきっかけは、インスタグラムにあった。
「顔や実名を出しコンテンツを発信すると、良い意見も悪い言葉も飛んできました。傷ついたり悔しくなったりして、人の意見に惑わされていたけど、突然、私自身の道があると感覚になって、私自身でいることに心地よさを感じるようになりました。」
洋服・ファッションは世界中で流行や好みがある。道を見つけるまでは流行りという流れに乗っかろうとしていたが、今はクローゼットから洋服を選ぶように、自分の道の横を通る流行りから、自分に合う物を取る・選ぶ感覚だそう。
久美子さんの元に届く言葉や情報を、1つ1つクリアしなければ次に進めなかった性格ゆえに、「なぜ?どうして?」とことん考えていた時は、「自分に自信がなかった、強さがなかっただけなんだと思いました。」
マイナスな言葉を無理にポジティブに考えるのではなく、1つの意見としてきちんと受け止める。
自身のことを少しずつ肯定するようになった先で、
「人からのイイねを求める気持ちがなくなって、私が私であることを私が好きだと思えるようになりました。」
SNSで「今」の自分を見られる社会の中で、フォロワーさんから届く応援も冷たい言葉も彼女の生きるエネルギーとなり、久美子さんは自身のことはもちろん、大切な家族のことを無限に愛する想いは、犬という異なった姿の動物にも十分すぎるほど伝わっているのではないだろうか。
優しい言葉やあたたかい行動の裏には、計り知れない想いが溢れていた。
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Ms.Kumiko Obinata
大日方 久美子 さん
Ms.Kumiko Obinata
パーソナルスタイリスト|都内在住