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Date 2021.08.24
WAN FILE 05 Ms.Natsuki Mori
花のように守られる愛犬PUAとフラガール
森 夏希さん
湘南で暮らす森夏希さん。彼女の大好きなフラダンスや愛犬PUAとの出会い、
そのルーツとこれからの未来についてのぞいてみよう。
「私が初めて踊った年齢と同じくらいの子たちに、今ではレッスンしているんです」
ハニカム笑顔が可愛らしい彼女は、小学校5年生のころフラダンスに出会った。
友人とふたりで体験レッスンを受けにいった公民館。花の模様が綺麗なパウ(スカート)にTシャツ姿で鏡に向かって真剣な眼差しで踊っている女性たち。
皆の前で「笑顔だよー!」と声をかける先生は、とても大きな笑顔で指導していた。
想像していたフラは、皆が笑顔でゆっくり踊る姿だが、次にかかった曲はころがり・はねるような軽快なリズム、気持ち良さというよりは、楽しさが彼女たちをつつんだ。
そのときどきの想いを表現する踊りということなのだろうか。
その初めてのフラで表現したのは、体中にひろがったワクワクする気持ちだった。
フラダンスは誰もが知る踊りのひとつであるが、実はハワイ語で「フラ=踊り」という意味をもっており、「ダンス」と言葉を並べると意味として「踊り踊り」となってしまうのが、本当のところだ。
しかし、そんなことは11歳の彼女には関係なく、とにかく踊ることに夢中だった。
「友達と一緒に体験したレッスンが楽しすぎて、即クラスに入らせてもらいました」
遥か昔、未だハワイに言葉がなかった時代に、神への信仰の表現や体験した出来事を後世へ伝える方法として、踊りが広まったことがフラの始まりといわれており、その繋がった歴史が、彼女の元へと届いていることなんか知らずに、その踊りに魅了されていった。
先に入っていた子たちに追いつきたくて練習に励む姿は、今彼女が教えている子供達のように、一生懸命に鏡に向かっていたのだろう。
踊っている曲の意味や踊りそのものの意味を理解したくて、ハワイのことを勉強していた。自分が好きなことのルーツに向かっていくと、ひとつひとつの深さを知り、その想いは彼女をハワイへと導いた。
フラを始めて7年後、一人ハワイへ旅することを決意し、5日間の旅が始まった。
「初めてのハワイ。初海外でしかも一人旅。現地のファミリーに迎えて頂いたホームステイでした。皆がよく行く観光名所のワイキキよりも、ハワイ島に行ってみたかったんです。そこでしか咲かない花や、そこでしか吹かない風を感じることで、心がいっぱいになりました。」
言葉や文化の違いに戸惑うこともあるのが海外旅行だが、彼女はどこか心の中で“帰ってきた”と感じていたに違いない。
「花も草も物も家も海も山も。何もかもが尊い」
「ハワイの人たちは、ひとつひとつのものを大切に、大事にしていました。花も草も物も家も海も山も。何もかもが尊いことだと。私は影響されすぎて、帰国すると皆に共有(強要)しちゃいます。笑」
笑いながら話す彼女の目は、とてもピュアな気持ちで輝いていた。「この間行った時には・・・」と言葉の節々に、記憶の新鮮さが伝わってくる。
きっと常に心の中にハワイでの体験が大きく残っているのだろう。それこそが彼女が素直でまっすぐにいられる理由なのだと感じた。
「一代目のワンちゃんが亡くなって、新しい子は迎えるつもりじゃなかったんです」
自宅のリビングに飾られた家族写真の中に、PUAくんではないパグ犬の写真があった。
一代目として一家のアイドルだった彼は、夏希さんが小学校6年生の時に亡くなった。家族は寂しさで胸がいっぱいでその隙間を埋めるように、新しい子を迎えることは誰も考えていなかった。
月日は流れ、勉強とフラに熱中していた青春真っ只中の高校3年生の頃、彼女が知ることもない離れた家族のもとに“PUA”が生まれていた。
「母の知人のご近所さんのお家から『2匹のトイプードルが生まれたのだけど、育ててくれる家族を探しているそう』と連絡があって、これは運命だと思って突然迎えれることになりました」
行くあてがない小さな命が、一生懸命に生きていることを聞いて、家族全員満場一致で彼を迎え入れることにした。
白くてふわふわした彼の名前はフラをやっている母と一緒に考えた。
“PUA=プア” ハワイの言葉で“花”という意味。
「ハワイの人が草花を大切にするように、森家でもお花のように大事にされればいいなと思いました」
ハワイで感じたことだけではなく、小さな頃からその感性や気持ちを持っていたのだと、お祖母様が営む畑のようすを見て感じた。畑で野菜や色とりどりの花を育てるように、1日1日の積み重ねが彼女の優しさをつくったのだろう。
笑顔が絶えないこの家族に迎えられたプアは、お家で元気に走り周っている。
「私たちが食事するときは必ずテーブルの下に陣取っています。家では自分が1番だと思っていて、たくさん走ったり吠えたりするんですが、散歩中には何かあるとすぐ私の後ろにピタッと隠れるので、結構臆病なんです」
夏の暑い日は、早朝か夕方にしか散歩ができない。近所の川沿いを歩くことも多いがアスファルトがすぐに熱くなってくるので、芝生がある公園へ車を走らせる。
ここでは息を切らしながら走り回って自由に過ごすが、通りすがりのワンちゃんに警戒する姿がなんとも可愛らしい。
時折立ち上がってなつきさんにお水をせがんでは、また走る。ワンちゃんが7才というと、ヒトにすると40〜50才代というのが一般的だが、二人の関係は姉弟といった感じだろうか。
青い空に向かって大きく伸びた木たちが、ふたりの成長を見守っているようだ。
「プアも一緒に旅行ができるようになってほしい」
地元にとどまらず、旅にでるなつきさん。
家族で旅行に行くときは、プアだけ長年お世話になっている病院に預けるそうだ。
イヌと暮らすヒトが増えてはいるが、一緒に過ごせる場所はまだ多くない。地元や遊びに出かける範囲で利用可能な場所は知っているが、旅行に行くとなるとほとんどの施設で受け入れてもらえないのが現実。
「イヌとはいえ、大切な家族なのに一緒に入れないお店や泊まれないホテルが多いので、思い出の作り方にとても悩みます。自然豊かな場所にいっても『プアに見せたかったなぁ』と思うことも多くて、楽しいには楽しいのですが、やっぱりプアがいないのは寂しいです」
弟のような存在である彼は、夏希さんにとってかけがえのない家族なのは確かなことだ。
旅は「どこに行くかも大切だが、誰と行くかという方が重要だ」なんて言葉を聞くこともあるが、まさにそんな心境なのだろう。
言葉ができる前の時代から、フラがポリネシア-ハワイ-日本へと渡ってきたように、遠い縁をへて出会うべくして出会ったふたり。
ルーツをたどる旅が彼女の心を豊かにし、身の回りにある全てのモノコトを大切にする気持ちは、必ずプアも感じている。
ありふれた日常に幸せを感じられる、感じたいと思う夏希さんたち家族には、草も花も空もみんな優しく見守り続けてくれるだろう。
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Ms.Natsuki Mori
森 夏希さん
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|平塚